「木」の家
最近、TVや雑誌だけでなく一般的な住宅においても仕上げ材に木(天然木)を使用している
のをよく見かけます。
室内では、床や壁・天井の仕上げ材として用いたり、梁や柱などの構造体である木を隠さずに
そのまま表している場合もあります。しかも、それらの家はログハウスという訳ではありません。
屋外でしたら、最も一般的なのはウッドデッキでしょう。一頃のガーデニングブームがウッドデッキ
の普及に一役買ってくれた、と言っても過言ではないと思います。
昔の家は、木・紙・土と、わずかばかりの金物(釘含む)でつくられていました。
これらの材料を用いて建てられた家は、調湿作用に優れた健康的な住まいでした。
しかし、それらの家にも当然短所はありました。その短所のみを補っていくかたちで現在のような
家づくりが広まっていきました。工業化製品による家づくりがそれです。
傷がつく、破片が落ちる土や漆喰の壁の変わりにビニールクロスが、隙間風の吹き込む木製建具に
変わってアルミサッシが、というように、住宅における建材の様変わりは異常なほど短い期間で
行われました。気候風土や生活習慣までが変わったのでは、と錯覚するほどに。
その間、欧米では日本建築の良いところに目が向けられていました。高温多湿な日本の気候において、
少しでも快適に暮らすための様々な工夫が採り入れられた日本建築を学ぼうとする動きがあったと
いうのですから、なんとも皮肉な話ではありませんか。
どうやら多くの日本人は欧米の文化、様式の良いところは絶賛するのですが、自国の文化に対しては
あまり誇らないことが多いようです。ひょっとしたらその良さにさえ気付いていないのかもしれません。
木材を積極的に利用することで、現在壊滅的状況にある林業も健全な状態を取り戻し、山林もより豊かに
なるのです。日本中で間伐などの手入れすらされず野放し状態になっている山がどれだけあるでしょうか。
自然界において木がもたらす恩恵は大きなものです。空気、土、水の浄化に木は欠かせません。
地元の木を用いて家をつくる。昔は当たり前だったその光景が再び見られる日は来るのでしょうか。